寄り道
「やる気は、いいんだが...」
近頃、何かやろうとする気があっても、中半端な準備で取り掛か
ると「あれっ、何をするんだったけ?」という事がある。これは歳
を取った証拠か、またはその前触れか、自覚がないうちに己の老化
現象が始まっているのだ。自分でその事に気付いていないと周りの
人に迷惑をかける。しかし意外と高齢者ほどこれを認めたくないと
いう意識が高い。勿論、それは悪くはないし立派だと思うが、他者
が手伝いを申し出ている時は素直に受けて欲しいものだ。
先日、母が食事を終えた時の話さ。私が流し台に食器を置き洗お
うと水道の蛇口を開いた途端「これくらいは自分でしないと何も出
来なくたってしまう。」と洗い出した。壁や冷蔵庫などを頼りに伝い
歩きがやっとの状態だというのに、女の嗜みとでも言うのか。私は
急いで片付けをして会社に出勤するつもりなのに、動きの遅い母が
洗い出すと時間もかかるしきれいに洗えていない分余計に手間隙か
かる。「洗っても汚れが落ちていないよ。」とも言えないし。時間と
気持ちの余裕があれば相手になって話を聞いたり出来るけど、つい
荒い言葉遣いになってしまい、後であの時はイライラして悪かった
なと思う。
そんな毎日の暮らしの中で、私の子供達に言っていることがある。
「誰だって歳を取る。お爺ちゃんお婆ちゃんの今の姿がお前さん達
の将来の姿なんだよ。お世話するのは偉いわけでもない。だってそ
うだろう?いつかは、自分も誰かの世話になるのだから。だから今
から恩返していくのさ。そして、時が来たら今度は、感謝していく
のだよ」とね。
春風するめ