寄り道
「余計な事を...」
我が家で唯一ペットになった亀のマメコフが、そろそろ冬眠の
準備に入る季節になった。マメは、人の声がすると「何だ?」と
とでも言うようにふっくりした動作で出てくる。毎日見慣れてい
る人、聞き慣れている声を判断出来るのだろう。
先日、今年で86才になる母を民生委員の方が訪ねて来た。戸
籍はあるが実在が不明でという事件が新聞テレビで大きく報道さ
れていたので、戸別に聞き取り調査で回っているのだろう。「お婆
ちゃんは元気かい?」と聞くので「元気だよ」と返事をしたが、
話したが、話し方と動作で元警察官だなとわかった。「今、流行の
年金詐取問題は役所が本人生存確認を怠っていているからこんな
風になっちゃんうんだよ。委員の集まりがあった話してちょうだ
い。昔ね、私が若い頃、もう40年以上前だけれど運転席に置い
てあった鞄を盗まれて小樽の警察署に届出に行ったのさ。その時
の刑事さんに『盗まれるお前が悪い!』と一喝されたんだ。する
とビックリして顔色も変わっただろう私に対して『鞄を盗むのは、
もっと悪い。つまり盗まれないようにしてあげる事が真心なんだ
よ。」とにっこり笑って話してくれた。」これは今も大事に心にし
まってある話だ。聞いていた民生委員は「警察の知り合いがたく
さんいるから、その真心の話を伝えますよ。」と言ってくれた。
そこまでは良かったが「あなたは何歳になりましたか?」と余計
な事を聞いてきた。歳は馬に喰わすほど取っているので言いたく
なかったが「62にだよ。」と答えると更に「もう、あと3つで老
人の仲間入りですね」ときた。
別に若いと思われたくもないが言われた側のこのこの気持ち、わ
からないかなぁ。
カメだって状況が呑み込めたら潜り込んでいた所から出てくる
のだから、人間なら彼らよりもっと知恵があるだろう。年金詐欺
だなんて間違った方向に行かないように導く事が出来るはずだ。
春風するめ