寄り道
 
 
  「ゆっくりの動作...」
 
  いつだったか、新聞報道で介護士が老人(利用者)に乱
 暴を働いた記事を目にして、気の毒な気持ちになってし
 まった。
  人は年を取ると、どうしても動きが鈍くなってくるし
 その分イライラする気持ちと、今迄の思いもあって行動
 に駆り立てたのだろう。
  誰にでも、起きそうな現象だと心構えしておかなけれ
 ば、とんでもないことになりそうだ。
 
  母も介護される側だが、気を使って行動を急いでやろ
 うとしている様だが、目も悪く簡単にはいかない。
  おまけに去年だったか、あばらの骨を折った。
  骨粗鬆症の性かチョット身体を変に動かすと簡単に骨
 が折れる。
  さすがの母も思いあまって「朝起きたら死んでいたら
 どんなに楽だか」と言った。
  家内から、すかさず「あと100年も生きれと言わな
 いから」という返事に苦笑していた。
 
  近頃の私も何かをするにも、時間がかかって来てきた。
  その様な事を、独り言のようにいってると家内が「も
 う年なのだから、若いと思っているのは自分だけで」と、
 痛烈な言葉を掛けられた。
 
  その事で恥ずかしながら、思い出した事がある。
  鏡で見る顔と道端を歩いてショーウィンドウに映し出
 される顔の違いは、何故だろうといつも思っていた事だ。
  家で見る顔は、くたびれながらも若い様に思ってたが
 街で見る顔は、紛れもなく年寄りの顔だ。
  この問題を解決しないうちに、近未来の話になった。
  これからの顔見るには、鏡を顎の下に置き、覗くよう
 に見ると将来の顔だと聞いて更なる、ショックを受けた。
 
  何も考えていない家内が、一番偉いと思う。
 
  この様な事を言ってると、「ここへ来て、座って話し聞
 くよ」と、家内から声掛けられたりして。
 
 
 
                     春風するめ