ちょっと一休み
 
 「今日のおがずは...」
 
 風呂から揚(あ)がってたところへ、嫁に行った長女が家に来た。
 家内が、「モツ鍋が出来たので食べていったら」と勧めていた。
 ふーん、家内にしては珍しいごちそうを作ったなぁと思って、そー
 っと鍋の中実を見たら肉は、少し上に顔を出している程度しかな
 いように見えた。
 白菜など鍋一面を覆っている様に思えたので一応、改めて「今日
 のごちそうは、何と言うものだい」とすっとぼけて聞いた。
 家内は、「ちゃんこ鍋だよ」と、こたえたが。
 先程、長女に言ったことと少し違ったように聞こえたが。
 そんなことは、どうでも良いかと、気を取り直しハシを入れた「暑
 いから気をつけてよ」と少しうるさい目に言われた。
 
 「急いで食べてやけどするんだから、何も食べさせていない子の
 ように」と続けて言われてしまった。
 何か、まずいこと言ってしまったっべかと思いながら、鍋の底をしゃも
 じですくいあげると肉は無く菜っ葉ばかりだ。
 「どうして、肉を取らないの」と言われ、もう一回すくいあげたけど、
 大根とかまぼこなどあったが肉は無かった。
 家内と長女は、肉を取って「おいしいね」と言いながら食べてる。
 なんと、外れくじを引かさる日なんだろうとちょっと嘆きたくなった。
 「お肉は、この所にあるよ。手間が掛かるね」と言いながら鍋から取
 って、よこし長女と話し始めた。
 
 「おとうさんね、急いで食べて火傷したり、魚の骨がノドに刺さったり
 でひどい目にあったことがあるんだよ」と、話の話題を私に振ってきた。
 「この様なことは、今始まった事ではないんだよ」と、家内は昔のこ
 とを穿(ほじく)り返し、新婚旅行に行った時ことを話しだした。
 静岡で太刀魚を食べ、その骨がノドに刺さり病院さがしで大変だった
 事を、35年以上前の話をはじめた。
 
 いやいや、まいったなぁ。
 晩ご飯のおかずにケチをつけた仕返しかね。
 ちょっと冗談のつもりが、ひどい結果になっちゃた。
 気をつけなくっちゃ。
 
 
                        春風するめ