ちょっと一休み
 
 「なまえが、モックラちゃんに変わってる?」
 
 我が家のニワトリを飼って、何年になるだろうか。
 今なら、慣れて「コッココッ」と、小さな鳴き声で寄ってくる。
 たまごを産まなくなってから、3年は過ぎている婆ちゃん
 ニワトリだ。
 冬は、動物にとって体力勝負の厳しい季節だ。
 人間さまなら、病気になれば病院などで介護して貰えるが、
 動物は、そうはいかない一貫の終わりさぁ。
 この間、家内が具合の悪くなったニワトリを抱いて来た。
 台所の床暖が、利いている所に置いた。
 当然のことながら暖かそうな物を掛け、水を飲ませ元気付
 けをしていた。
 それから3日くらい過ぎた頃、家内はガムテープを持ち出し
 た。
 どうやら、「ダニ」が出たようだ。
 「このモックラちゃんは、すぐ死ぬと思っていたのよ。次の日燃
 えるゴミに出そうと思っていたのだけど..」と、家内は半べそ
 になりながら身体をボリボリと掻(か)きながら話していた。
 家内には言わなかったけど、予定とおりに行かないのが、世の
 中さと、胸の内で小声で言ったね。
 あれ、聞いたことのない呼び名なので「このニワトリの名前か
 わったの?」と、聞いた。
 「そうだよ。具合悪くなった鳥は、羽をふくらませてモックラと
 まんまるに膨らむでしょ、それで名前を付けたのよ」と言いう
 のである。
 ふーん、と感心しながら、問題のニワトリのダニが凄く家に
 置けないので、小屋へ戻した。
 その時である。
 モックラちゃんに掛けていた見覚えのある物、私が除雪する時
 に着ているオーバーではないか。
 家内は、私に断りなしに「ダニの出るモックラちゃん」に、使って
 いたのだ。
 「なんで..」と、思ったが、もう遅いし、悲しいよ。
 洗濯したって、着れるものじゃない、捨てることにした。
 いやいや、まいった。
 私も、具合が悪くなった時、どんなあだ名が付くのだろうかと、
 先行き心配になってきた。
 こんな経験から何を学ぶ、上着だけが無くなっただけだろうか。